定着率向上の決め手:「カッコいい上司(ロールモデル)」の絶対条件

 

はじめに

企業は従業員の定着率を高めるために様々な施策を講じてきました。柔軟な勤務時間やリモートワーク、メンタルヘルスケアプログラム、育児介護支援などの福利厚生の充実、キャリアの成長をサポートする研修や評価制度の透明化、1on1ミーティングの導入などコミュニケーションの強化、そして競争力のある給与やインセンティブ制度などがその例です。しかし、これらの施策が必ずしも期待通りの結果をもたらしていないのではないかと考えます。

 

私は、「カッコいい上司(ロールモデル)」の存在こそが定着率向上の鍵であると考えます。以下、カッコいい上司の職場への影響、カッコいい上司の人物像(モノの見方や考え方、職場での行動)、そしてそのような上司の育成方法について述べていきます。

 

 

1. カッコいい上司(ロールモデル)の職場への影響

モチベーションの向上: 部下は、成功している上司や尊敬できるリーダーを見て、自分もそのようになりたいと感じます。これは仕事へのモチベーションを高める要因となります。

 

職場環境の改善: カッコいい上司は良好な職場環境を作り出す能力があり、これにより部下は働きやすさを感じ、長く留まりたいと思うようになります。

 

成長の機会提供: カッコいい上司は部下に対して成長の機会を提供し、スキルアップをサポートします。部下は自分の成長を感じるとともに、職場に対する満足度が高まります。

 

 

2. 定着率の向上に寄与する要因

コミュニケーションの質と量: カッコいい上司は、オープンで効果的なコミュニケーションを行い、部下の意見や提案を尊重します。これにより、部下は自分が評価されていると感じます。

 

サポートとフィードバック: 迅速かつ建設的なフィードバックを提供する上司は、部下のスキル向上と自信を促進します。これが定着率の向上につながります。

 

チームワークの推進: 部下同士の良好な関係を築くためのサポートを行う上司は、職場全体の定着率を向上させることができます。

 

 

3.「カッコいい上司(ロールモデル)」の8ヵ条

私は今まで200社以上の人材育成・組織活性化のコンサルティング、約20,000人への教育研修を行ってきましたが、カッコいい上司には、共通するモノの見方や考え方、能力があります。以下にそれを述べます。

 

(1)カッコいい上司は自らのビジョンを持っている

・ビジョン達成に対し本気である(ビジョンへの熱意)

・ビジョン達成のため、率先垂範を怠らない(率先垂範)

・部下を勇気づけるコミュニケーションを怠らない(ビジョンへの方向付けと勇気づけ)

 

(2)カッコいい上司はコミュニケーション能力に優れている

・部下が思ったことを自由に発言できる雰囲気づくり(笑顔・アイコンタクト)

・自分(上司)と反対(異なった)意見でも不利な扱いはしない(心理的安全性の確保)

・部下の話を最後まで聴く(「あっ、それはねぇ。」と言って話を中断させるのは厳禁)

 

(3)カッコいい上司は自らの仕事に誇りを持っている

・自分の仕事が社会の中でどのような役に立っているかを理解している(仕事への誇り)

・そのことを常に部下に語っている(周囲への影響)

・給与だけでなく仕事そのものから得られるヤリガイや成長を大切にしている(ヤリガイ)

 

(4)カッコいい上司は意思決定力に優れている

・状況に応じた適切な意思決定が出来る(判断力)

・意思決定する勇気がある(決断力)

・意思決定に対し責任を持つ覚悟がある(責任感)

 

(5)カッコいい上司は部下の成長に強い関心を持っている

・部下一人ひとりへの観察を怠らない(部下への関心と観察)

・成長を褒め、行動変容を促す場合は建設的なフィードバックを行う(適切なフィードバック)

 

(6)カッコいい上司は問題発見・解決能力に優れている

・問題発見→原因分析→解決策の立案までの一連のスキルを持っている(スキルの保持)

・チームで解決するためのリーダーシップを持っている(リーダーシップ)

 

(7)カッコいい上司はライフワークバランスのサポートを忘れない

・部下のライフワークバランスを理解・尊重する(ライフワークバランスの理解)

・労働時間の調整等、実現のための支援を惜しまない(支援、サポート)

 

(8)カッコいい上司は誠実である

・公序良俗に反しない正しい価値観・倫理観を持っている(正しい価値観・倫理観)

・それに従って行動する(実践、ブレない)

 

 

4. カッコいい上司の作り方

では、どのようにしたら「カッコいい上司」を育成できるかについて具体的な方法を述べます

 

(1)リーダーシップ育成プログラムの導入

・効果的なリーダーシップ育成プログラムの設計と実施

・その前提として、自社に合った「カッコいい上司(ロールモデル)」を明確化すること

 

(2)人事評価制度への導入

・カッコいい上司(ロールモデル)の行動特徴を評価項目に追加すること

 

 

5 .結論

ここまで、従業員の定着率向上における「カッコいい上司(ロールモデル)」の重要性について述べてきました。従来の施策だけでは十分な成果が得られない中、部下が目標とするロールモデルの存在が決定的な役割を果たすことが明らかです。人事部門や経営層が中心となってリーダーシップ育成プログラムを自社で作成・実施するとともに、評価制度へ反映することによって、カッコいい上司を育成し、従業員の定着率を飛躍的に向上させることができると確信しております。