[4]エゴグラムによるリーダータイプの分析

エゴグラムの読み方

では、第3項で作成したエゴグラムはどのように読んだらよいのでしょうか。
次に、読み方のポイントをお教えましょう。

①まず、一番目と二番目に高い自我状態に注目してください。
ある一つの自我がきわだって高いという人もいれば、
二つの自我が同じぐらいに高いという人もいるでしょう。
いずれにしても、それが、あなたの性格の中で優位な位置を占めている自我です。
したがって、日頃から、特徴的に行動として表れている、または表れやすい自我です。

②優位な自我の基本的な性質を考えてください。

第2項の(28ページの図表2「自我状態の外部的特徴」)に掲げた基本的性質を考えてくだ
さい。

③次に、低い自我状態に注目し、その特質を考えてください。
(たとえば、低いAならば、「非合理的」「考えない」など、図表2に示した自我状態と反対の性質)

④それらのバランスを考えながら、総合的に判断します。

少しわかりづらいかもしれませんので、
実際のエゴグラムを見ながら、読み方のポイントを考えてみましょう。

 

CP優位タイプ

命令的、権威的、排他的などの性質を表すCPが突出しています。
その反面、他人への思いやりを表すNPや、他人との協調を表すACが異様に低くなって
います。
このような人は、相手の感情や気持ちに全くといっていいほど関心を示さず、
自分の価値観を押し付けて平然としています。
たまに営業会社で、成績の上がらない部下を立たせた
まま、みんなの前でコテンパンに、
かつ延々とどなりつけている上司がいますが、まさにこのエゴグラム・タイプといえるでしょう。

しかも困ったことに、この例では、論理的・合理的な
性質を表すAもまた低いため、
その場その場の感情で、判断や指示命令が変わることがあり、相手は大いに混乱します。

では、高いCPは、「いけないエゴグラム」なのでしょうか。
答えはNOです。
なぜなら、困難な状況を切り抜けていくリーダーシップの源泉、
すなわち、進むべき方向を明示し、または高い目標を掲げ、
部下を引っ張っていく源となる自我だからです。

問題は、他の自我とのバランスにあります。
高いCPの人は、
NPやAやFCを上げていく努力が必要です。

 

NP優位タイプ

NPの特徴的性質である思いやりや保護的な言動が多
く見られ、温かさを感じさせてくれる人です。
くじけそうになったときや、困ったことがあったと
き、優しく手を差し伸べてくれるのが、このタイプ
です。
まさに、母親的な自我状態といえるでしょう。
しかし、この例では、相手に同情を示し、気持ちをくんで慰めてあげることはできますが、
その困難な状況から救い出してあげることはできません
なぜならば、あまりにもCP・Aが低いため、
あるべき姿を示してあげることや、冷静なまたは論理的な判断を下すことができず、
相手がその状況から脱出するための方法を与えてあげることができないからです。

NPは、すばらしい自我状態です。
しかし、それを充分に活かすためには、Aを高めていく努力が必要だということです。

 

A優位タイプ

合理的、客観的、論理的な性質を持つAが突出しています。
そのため、困難な状況や複雑な問題に直面しても、冷静に物事を分析し、的確な解決策を導き出すことができるでしょう。
現在のような混沌とした社会・経済環境の中にあって、組織を維持・発展させていくためには、リーダーにとって欠くことのできない自我であるとえます。
また、感情に左右されず、明確な基準を持ち、常に一貫した言動を保つため、周囲からの理解・納得は得やすいといえます。

しかし、ここでもまた、他の自我とのバランスが問題になります。
このエゴグラムを各自我の高低とその特徴にしたがってストレートに読んでみると、以下のようになります。
すなわち、「冷静沈着に物事を分析し、客観的かつ論理的に判断を下すことができる(高いA)が、
その判断または基準から逸脱したものには批判的・排他的な行動をとる(高いCP)。
その際には、相手の意見には耳を貸さず(低いAC)、思いやりのかけらもない(低いNP)」。
いかがでしょう?
このエゴグラムの人が、自分の上司や子どもの担任教師だったらと考えると、背筋の凍る思いがします。

リーダーにとって必要不可欠なAは、高いNP・FCを伴ってこそ、力を発揮できるのです。

 

FC優位タイプ

FCが突出している人は、好奇心にあふれ、創造性が豊かで、積極的です。
そして、何よりも楽しいことが大好きです。
明るく、開放的であるため、リーダーとして、組織をグイグイ引っ張っていける可能性大です。
反面、子どもに特有な自己中心的な面も持ち合わせています。
嫌なものは嫌、自分のやりたいようにやるというものも、このFCの特徴です。

エリック・バーン博士の愛弟子であり、エゴグラムの
創始者であるジョン・M・デュセイ博士が、
その著書『エゴグラム』の中で、FC優位タイプについ
て次のように解説しています。
「とても愉快なAは、のびのびと笑い、そして泣く。直
感的な感覚や創造性の基礎がその中にある。
FCは自由や軽はずみな行為を楽しむ。悲劇と喜劇の
分かれ目もここにある。
FC優位タイプは、他の自我との均衡が崩れる時に障
害が起こる」※3

図表7のエゴグラムは、まさに悲劇的なそれを示して
いるといえます。
すなわち、「社会の規範やルールはおかまいなし(低いCP)。
自分が楽しければそれでよく、
行きあたりばったりで行動し(低いA)、他人の気持ちなど考えたこともない(低いNP)」

というような人物像です。
最近、電車内や公共の場所での携帯電話の無秩序な利用が問題になっていますが、
まわりの迷惑を顧みず、楽しそうに大声で携帯電話を使用している若者(もっとも、若者だ
けではありませんが)を見るにつけ、このエゴグラムが示唆している悲劇的な結末を想像せ
ずにはいられません。

すばらしい自我である高いFCを活かすも殺すも、NP・Aの高さにかかっているといえます。

 

AC優位タイプ

このエゴグラムは、
「自分の意見や価値観を持ってはいるが(ほどほど高いCP)、
それと反対の意見や指示を受けたりすると、
どうしてもそれを受け入れてしまう(高いAC)。
しかも、それを論理的に消化することができず(低いA)、また、自分の考えを素直に表現
することができないため(低いFC)、常に心の中で葛
藤やストレスを抱えている」
そんな人物像を想起させます。
実際にはそう多くはいないでしょうが、テレビドラマ
によく出てくる「部長のおっしゃるとおりです。全くそ
のとおりです」と言いながら、
赤提灯でくだをまいている中間管理職は、
まさにこのエゴグラムといえます。

以上、簡単にエゴグラムの読み方を見てきましたが、
おわかりいただけたでしょうか?