2ストロークの重要性
哀しい動物実験が物語るもの
ハーロウの子猿の実験
ウィスコンシン大学霊長類研究所長のH・F・ハーロウは、
「生後まもない赤ちゃんは、母親に何を求めるのか」を調べるため、
次のような実験をしています。
生後まもない赤毛猿の赤ちゃんを母猿から引き離し、
そのかわりに、二つの模型の母親人形をあてがって育てることにしました。
一つは、針金だけで作られた円筒形に、哺乳ビンを取り付けた人形で、
もう一つは、哺乳ビンはないが、柔らかい厚地の布で作られた人形でした。
そうすると、お腹がすいてミルクを飲むときだけ、
子猿は針金の人形のところに行きますが、
それ以外のときは、一日中柔らかい布の人形にしがみついていました。
このことは、子猿にとっては、飢えを満たしてくれるミルクよりも、
温かい肌の感触のほうが、大切なのだということを示しています。
次に、しがみつくと、ゆっくり揺れる布製の人形と、動かない布製の人形とを並べておい
たところ、子猿は揺れる人形に好んでしがみついていました。
以上のことから、生後まもない子猿が母親に対して求めるものは、
ミルク<温かいぬくもり<抱っこされたときの心地よい揺れ
というふうに表現できます。
これはまさに、ストロークの重要性、必要性を物語る確かな証明といえるでしょう。
実は、この実験には以下のような後日談があります。
それは、この実験の過程で、長時間針金製の人形に育てられた子猿は
後になって他の猿に対して、激しい攻撃性を示したということです。
さらに成長して自分が母親になってからは、
自分の子どもに対して全く無関心で、
子どもが抱きついてきたりすると、蹴飛ばしたり、噛みついたりして、
虐待したという報告がなされています。